新しい秩序の時代〜注17

公開: 2019年7月25日

更新: 2019年7月xx日

注17. 嘘を許す世界

東洋の思想では、「場合によっては、嘘をつくことが許される」例があります。これは、嘘を伝えられる人の感情を問題にしているからのようです。日本でも、最近まで、ガンが発見された人に「ガンです」と宣告することは、本人が生きる意欲を喪失(そうしつ)すると言う理由で、避(さ)けられてきました。その代わりに、別の病名を告げることが普通でした。日本では、「嘘も方便」と言って、円滑にコミュニケーションを取る手段として、嘘をつくことを認める文化がありました。キリスト教を基礎とした欧米の社会では、自分の運命を意識して生きることが優先されるため、昔からガン患者にはガンの宣告が為されていました。自分がガンであることを知り、残りの人生をどう過ごすかを考えるためでした。倫理の基礎となる宗教観の違いにより、東洋と西洋では、嘘の意味が全く違っていました。

参考になる読み物

中村 元、「日本人の思惟方法」(1989年)、春秋社